「弘川です。弘川 純(ひろかわ じゅん)」
濁りきっていた先輩の双眸が、たしかに揺れた。
「……じゅん?」
「う、いきなり下の名前呼びですか……かまいませんけど」
「漢字は?どう書くの?」
「純粋の純です」
「どんなのだっけ。そーゆー澄んだ文字、普段ほとんど触れないから」
「こうですよ」
わたしの手首を握りしめていた大きな手を、優しくほどき
そのてのひらに人さし指で文字を書く。
『純』
吉崎先輩の肌に指を滑らせるたび、先輩はぴくりと反応を見せた。
「ん……ぅ、くすぐったい」
「ちゃんとわかりました?」
「わ、わかりました……。キレイな名前だね、純」
血色のない頬をうっすら染めて、ほほえむ吉崎先輩。
やはりかわいいなこのひと。
見た目は触っちゃいけない植物の葉のようなのに、触ってみると素直に色づく。



