君のためにこの詩(うた)を捧げる

放課後。



昇降口の下駄箱を開けると、
中に小さな封筒が入っていた。



差出人は――湊。


震える手で封を開ける。


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澪へ。

最初は、君に近づくために動いていた。


でも、君を見ているうちに、
誰かのためじゃなく、自分のために“好き”になってた。

君といる時間が、俺の全部だった。


でも、君が橘を見つめる時の顔を見て、分かった。
俺の居場所はそこじゃない。

だから、ここで終わりにする。


でも、嘘じゃなかった。


あの時の気持ちだけは、本当だった。

ありがとう。
朝倉湊。
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澪の手が震えた。



(優しかった湊くん……全部分かってたんだね)


手紙を胸に抱きしめると、
涙が静かにこぼれた。