君のためにこの詩(うた)を捧げる

放課後。


校舎裏の中庭は、撮影スタッフと照明機材でまるで別世界になっていた。
生徒たちは遠巻きに見守り、女子の歓声があちこちで上がる。



「やっぱり、本物ってオーラ違うね……」



七海が小声でつぶやく。
澪も思わず息をのんだ。


遠くの芝生の上に、ひとり立つ彼――橘 輝。
テレビよりもずっと、眩しい。
けれど、その瞳の奥には、かすかな緊張と孤独が見えた。



カメラが回り、スタッフが「本番いきまーす!」と声を張り上げる。



その瞬間、輝の表情が変わった。
光を浴びたような完璧な笑顔。
まるでスイッチが入ったみたいに、そこに“俳優・橘輝”が立っていた。



(……やっぱり、もう、遠い人なんだ)



澪がそう思ったそのとき――