君のためにこの詩(うた)を捧げる

雨が降っていた。


放課後の廊下はしんと静まり返り、窓の外を叩く雨音だけが響いていた。


教室の灯りを消してから、澪はカバンを抱えて歩いた。



誰もいない昇降口。



傘立てに残った一本のビニール傘。


(あのニュースから、もう三日……)



あの日、輝は完璧な笑顔で
「彼女はいません」
と言った。



SNSでは


「プロ意識が高い」
「かっこいい」
と賞賛の嵐。



けれど澪の胸の奥では、
“いません”という言葉が何度も何度もこだましていた。


「……いません、か」

小さくつぶやいて、傘を開く。



冷たい雨粒が頬に触れるたび、心がざわめく。