君のためにこの詩(うた)を捧げる

その日のニュースで、
橘輝は記者の前で笑っていた。



『噂の相手とは、ただの同級生です。


僕の彼女は――
この業界には、いません。』



テレビ越しの彼の笑顔は、完璧だった。



それなのに、どうしてこんなに涙が出るんだろう。



澪は画面を見つめたまま、手のひらをぎゅっと握る。



(“いません”って、言葉の中に、
ちゃんと“私”が含まれてたらいいのに。)