君のためにこの詩(うた)を捧げる

「……橘輝、熱愛報道か?」


教室中が、その話題でざわついていた。



朝、ニュースサイトに載ったぼんやりした写真

――
校門の前で、輝が誰かの肩を支えるように立っている。



相手の顔ははっきり映っていない。



けれど、その髪型も制服のリボンも、澪と“似ていた”。


「これ、結城さんじゃないの?」

「うそでしょ?」

「マジで!?」



噂は瞬く間に広がり、教室の空気が冷たく変わっていく。



澪は机の端で小さく息を詰めた。



七海の顔を見ると、複雑な表情をしていた。



驚きと、戸惑いと、どこか少しの痛み。



「澪……本当に、あの記事の人じゃないよね?」



「違うよ。偶然だってば」



必死に笑ってみせても、声は震えていた。



スマホの通知が鳴る。



【輝から:屋上、来れる?】