君のためにこの詩(うた)を捧げる

昼休み。



澪が廊下を歩いていると、女子グループの声が聞こえた。



「ねぇ、あの子でしょ? 橘くんと一緒に屋上にいた子」



「そうそう、幼なじみなんだって」



「へぇ~、“幼なじみ”って、便利な言葉だね」



嘲るような笑い。
澪の足が止まる。



胸が痛くて、喉の奥がつまる。


その時。



「何してんの?」



背後から聞き慣れた声。



振り向けば、輝が立っていた。
人混みの中で一瞬にして空気が変わる。



「輝くん! 一緒にお昼食べよ!」



女子たちが一斉に声をかける。



けれど、彼はゆっくりと澪の方を見た。



「……ごめん。今日、用事あるんだ」



そう言って澪の腕を軽く引き、そのまま廊下の奥へと歩き出す。



「ちょ、ちょっと! 何してんの!」



「放っとけ。……泣きそうだったろ」



「泣いてない!」



「泣きそうな顔、昔から変わってない」