柱: 夜/河川敷のベンチ/午後9時過ぎ
ト書き: 川の水面が街の光を映して、ゆらゆらと揺れている。
夜風が少し冷たく、虫の音が遠くで響く。
そのベンチに、美海と玲央が並んで座っていた。
互いに何も言わず、ただ静かな時間が流れていた。
美海(小声で):「……寒くない?」
玲央(首を横に振る):「平気。」
ト書き: 玲央の声は低く、どこか遠い。
目線は川の向こうに向けられている。
まるで、何かを思い出しているように。
美海(少し間を置いて):「ねえ、玲央。今日のこと……ごめんね。“奪う”なんて言わせるほど、私、ちゃんと気持ち伝えられてなかったのかもしれない。」
玲央(静かに首を振る):「違う。悪いのは俺だ。……俺が、おかしいんだ。」
ト書き: その言葉は、苦い吐息のようにこぼれた。
玲央の目が、街灯の光を反射して、少しだけ潤んで見える。
美海:「玲央……何かあったの?」
ト書き: 玲央はしばらく黙ったまま、手の中のペットボトルを見つめていた。
そして、ゆっくりと話し始める。
玲央(低い声で): 「俺、小さい頃から……家に帰っても誰もいなかった。親は仕事でほとんど家にいなくて、何か話しても“あとにして”って言われるだけ。……だから、誰かに必要とされる感覚が、わからなかった。」
ト書き: 美海は静かに彼を見つめる。
玲央の横顔が、いつもよりずっと幼く見えた。
玲央(続けて): 「誰かが笑ってくれるだけで、すぐに“俺を見てくれてる”って思ってた。でも、いつも裏切られて、勝手に期待して、勝手に傷ついた。だから、もう誰も信じないって決めたんだ。」
ト書き: 風が吹く。
玲央の前髪が揺れ、美海の方を向いた。
その瞳は、かすかに震えていた。
玲央(続けて): 「……でも、美海だけは違った。俺が黙ってても、ちゃんと見てくれた。怖い顔してる俺にも、普通に“おはよう”って言ってくれた。……それが、嬉しくて、怖かった。」
美海(小さく息を吸って):「玲央……」
玲央(かすれた声で):「気づいたら、お前を失うことが一番怖くなってた。笑ってるお前を、俺だけのものにしたいって思った。……それが、間違いだって、わかってても。」
ト書き: 玲央の手が膝の上で強く握られている。
爪が掌に食い込むほどに。
美海(そっと手を伸ばして):「玲央。」
ト書き: 彼の手の上に、美海の手が重なる。
小さくて、温かい手。
玲央の指が、少しずつ緩む。
美海(穏やかに):「奪うって言葉はね、誰かを独り占めするためのものじゃないよ。それだけ必死に誰かを想えるって、すごいことだと思う。でも、私は“隣で生きたい”。玲央と一緒に、ちゃんと。」
ト書き: 玲央の目が美海をとらえる。
その瞳に、初めて“安堵”の色が宿る。
玲央(静かに):「……俺、変われるかな。」
美海(微笑んで):「変わらなくていいよ。ただ、見つけよう。二人で。」
ト書き: その言葉に、玲央は小さく笑った。
それは、初めて見せる“少年のような笑顔”だった。
ト書き: 孤独を知っていたからこそ、彼は人を強く想った。
そして、美海はその痛みごと愛そうと決めた。
――二人の距離は、ようやく“恋”の形になり始める。
ト書き: 川の水面が街の光を映して、ゆらゆらと揺れている。
夜風が少し冷たく、虫の音が遠くで響く。
そのベンチに、美海と玲央が並んで座っていた。
互いに何も言わず、ただ静かな時間が流れていた。
美海(小声で):「……寒くない?」
玲央(首を横に振る):「平気。」
ト書き: 玲央の声は低く、どこか遠い。
目線は川の向こうに向けられている。
まるで、何かを思い出しているように。
美海(少し間を置いて):「ねえ、玲央。今日のこと……ごめんね。“奪う”なんて言わせるほど、私、ちゃんと気持ち伝えられてなかったのかもしれない。」
玲央(静かに首を振る):「違う。悪いのは俺だ。……俺が、おかしいんだ。」
ト書き: その言葉は、苦い吐息のようにこぼれた。
玲央の目が、街灯の光を反射して、少しだけ潤んで見える。
美海:「玲央……何かあったの?」
ト書き: 玲央はしばらく黙ったまま、手の中のペットボトルを見つめていた。
そして、ゆっくりと話し始める。
玲央(低い声で): 「俺、小さい頃から……家に帰っても誰もいなかった。親は仕事でほとんど家にいなくて、何か話しても“あとにして”って言われるだけ。……だから、誰かに必要とされる感覚が、わからなかった。」
ト書き: 美海は静かに彼を見つめる。
玲央の横顔が、いつもよりずっと幼く見えた。
玲央(続けて): 「誰かが笑ってくれるだけで、すぐに“俺を見てくれてる”って思ってた。でも、いつも裏切られて、勝手に期待して、勝手に傷ついた。だから、もう誰も信じないって決めたんだ。」
ト書き: 風が吹く。
玲央の前髪が揺れ、美海の方を向いた。
その瞳は、かすかに震えていた。
玲央(続けて): 「……でも、美海だけは違った。俺が黙ってても、ちゃんと見てくれた。怖い顔してる俺にも、普通に“おはよう”って言ってくれた。……それが、嬉しくて、怖かった。」
美海(小さく息を吸って):「玲央……」
玲央(かすれた声で):「気づいたら、お前を失うことが一番怖くなってた。笑ってるお前を、俺だけのものにしたいって思った。……それが、間違いだって、わかってても。」
ト書き: 玲央の手が膝の上で強く握られている。
爪が掌に食い込むほどに。
美海(そっと手を伸ばして):「玲央。」
ト書き: 彼の手の上に、美海の手が重なる。
小さくて、温かい手。
玲央の指が、少しずつ緩む。
美海(穏やかに):「奪うって言葉はね、誰かを独り占めするためのものじゃないよ。それだけ必死に誰かを想えるって、すごいことだと思う。でも、私は“隣で生きたい”。玲央と一緒に、ちゃんと。」
ト書き: 玲央の目が美海をとらえる。
その瞳に、初めて“安堵”の色が宿る。
玲央(静かに):「……俺、変われるかな。」
美海(微笑んで):「変わらなくていいよ。ただ、見つけよう。二人で。」
ト書き: その言葉に、玲央は小さく笑った。
それは、初めて見せる“少年のような笑顔”だった。
ト書き: 孤独を知っていたからこそ、彼は人を強く想った。
そして、美海はその痛みごと愛そうと決めた。
――二人の距離は、ようやく“恋”の形になり始める。



