『隣で、生きていく。』 こちらはマンガシナリオになります。 「第9回noicomiマンガシナリオ大賞」にエントリーしています。

柱: 冬の朝/登校途中/午前7時半


ト書き:
白い息がふたりの間に揺れて、
通学路には霜が降りていた。

いつもの道。いつもの時間。

けれど、どこか違って見えるのは──
並んで歩く心が、もう迷っていないからだった。


美海(マフラーに顔を埋めて):「玲央、卒業まであと少しだね。」

玲央(短く):「ああ。」

美海:「……寂しい?」

玲央(ふっと笑って):「寂しくねぇって言ったら嘘になる。でも、お前が選んだ未来なら、俺もちゃんと見たい。」


ト書き:
玲央の声はいつもより柔らかい。

かつて、誰かの夢を遠ざけていた彼が、
今はその夢を“支える側”になっている。


美海(嬉しそうに):「ありがとう。私、大学で心理学やりたいの。
 誰かの痛みを、少しでも軽くできるように。」

玲央(静かに頷いて):「お前らしいな。……俺は整備の専門行く。バイクでも車でも、自分で動かせるもん作りたい。」

美海(微笑して):「いいね、それ。玲央らしい。」


ト書き:
ふたりは信号の前で立ち止まり、赤から青へ変わるのを見つめる。

手が自然に触れ合って、指が絡む。


玲央(少し照れながら):「なあ、美海。」

美海:「ん?」

玲央(真剣に):「この先、お互い別の道でも……
 ちゃんと、俺らでいよう。」

美海(少し驚いて):「“俺らでいよう”?」

玲央(頷いて):「誰かの所有でも、依存でもなくて。
 信じ合って、支え合って生きてく──そういう意味で。」


ト書き:
美海の瞳がやわらかく潤む。

玲央の言葉は、あの“奪う”という言葉とはまるで違っていた。

同じ愛でも、成長の重みが違う。


美海(小さく笑って):「うん。約束する。玲央といると、どんな未来でも怖くない。」


ト書き:
風が吹き、ふたりのマフラーがふわりと重なる。

青信号に変わる瞬間、玲央が彼女の手を強く握った。


玲央(真っ直ぐに):「行こう、美海。」

美海(微笑して):「うん。」


ト書き:
冬の光の中、ふたりは肩を並べて歩き出す。

校門の先には、それぞれの未来が待っている。

けれど、もう怖くない。

なぜなら──

どんな場所でも“心は隣にある”と知っているから。


柱: 放課後/教室/夕方


ト書き:
最後のHRが終わり、教室が静まり返る。

窓の外は淡い茜色。

玲央は机に座り、美海の方を見た。


玲央:「なあ、美海。」

美海(顔を上げて):「なに?」

玲央(少し照れて):「お前の夢、叶ったら……また俺に教えてくれ。」

美海(微笑んで):「玲央の夢もね。」


ト書き:
二人の笑顔が重なり、沈む夕陽の光に包まれる。

それは“終わり”ではなく、“始まり”の光だった。

ト書き:
奪う恋は終わった。

信じ合う愛が、始まる。

互いの未来を選んだ二人の歩幅は、
今も──同じリズムで響いている。