きみの春に、溶けていく -プロローグ-

今日はクリスマスイブ。
晴れてるのに、小雪が舞ってる。
こんなことは、いつものこと。
だけど、今年はいつもと違う。
朔が私の恋人になって、初めてのクリスマス。
私たちはイルミネーションを見に行くことにして、夕飯の後に駅前で待ち合わせした。

「はぁ〜」
「灯はアホなのか」

白い息を吐いて手を暖めてると、朔が来てそんなんで暖まるかよと手袋ごと冷たい手を包んでくれた。

「暖かいね」
「そうだな」

歩き出す。
イルミネーションまでは歩いて5分くらいで、キラキラした輝きはもう遠くに見えていて。
同じ方向に歩いていく人たちはやっぱりカップルが多かった。

「朔、私たち、彼氏彼女なんだよね?」
「そうだ。でもさ、なんか分かんねぇけどとにかく大切にしたいんだよ。灯のこと、俺のもんだって縛りたい訳じゃない」
「うん、分かるよ。朔は出逢った時からそうだったもん。ずっと優しかった」
「でも、それでも、誰にも渡したくない」
「うん、私も。朔。優しいとこも、頭がいいとこも、私のこと全部知ってて。私だけの朔でいてほしい」

イルミネーションの会場に着いた。
大きなクリスマスツリーの下で私たちはまた唇を重ねた。
手を重ねた。心を重ねた。

「灯を愛してる」

キラキラした街が、一生の中で1番輝いて見えた。

ーーだからこそちゃんと、伝えなきゃ。

「ねぇ、朔。私、もうすぐ朔のこと、忘れちゃうかも。ごめんね」

「えーー?」

いつまでも、記憶を残せない。
それは始めから決まっていたこと。
朔のそばに居たいなら。

来年も、再来年も、君とこうしてクリスマスを過ごせたらいいけれど、同じくらい、私は君と同じになりたい。病気じゃない私で、君と同じ世界を生きていきたい。