きみの春に、溶けていく -プロローグ-

時を経て、14年後の冬。
2025年12月1日。晴れのち雪。
この街にまた雪が積もった。

私も朔も高校2年生で、同じ高校に通っていた。
だけど朔は、どんどんかっこよくなった。
背も伸びて(小6の時に一気に15cmも伸びた!)、声も低くなって(中2の春から少しずつ)、だんだん自分のことを話さなくなった(これはいつからだろう?)。

「朔ー! 一緒に学校行こ!」

私は前を歩く、朔の背中をポンと叩いた。

「おぅ、行くか」

一瞥すると、直ぐに手元の本に目を落とす。
難しい哲学の本(ソクラテス?とか)、星や宇宙や物理の本が好きだけど、何書いてるのかさっぱり私には解んない。

「またその本?」
「面白いんだよ」
「全然面白くなーい」

私は記憶はできるけど、何でも記憶できる訳じゃない。
朔とか、自分が経験したことの記憶だけが鮮明に残るんだ。
それ以外は眠くなっちゃう。

「来週から期末だな」
「やめて〜忘れてたのに」
「忘れるなよ、そういうことは」
「へへ、朔にあげた誕生日プレゼントなら全部覚えてるよ」
「じゃあ、7歳は?」
「ポキモンのぬいぐるみ! 朔が超気に入ってずっと抱っこして一緒に寝てた」
「それは早く忘れてくれ」

嫌だよ。今でも部屋の隅にリボン巻いて置かれてることも、たまにぎゅっとしてるのも見てるし。