きみの春に、溶けていく -プロローグ-

今年も春が来た。
雪が溶けていき、日々すこしずつ暖かくなる。
もうすぐ雪じゃない桜の花びらが降る、春が来る。

「灯、おはよう」

知らない男の子が横に並んで歩く。
一緒に学校へ行こうと聞いてくる。

「おはようございます。はい。学校、行きましょう」

男の子は何故か切なそうに笑う。
そろそろマフラーは要らないかな、と思っている時、急に隣に並んでいた男の子が立ち止まった。
星の形をしたキーホルダーの中から、折り畳まれた紙が1枚落ちてきた。まるで桜の花びらのように。

「落ちましたよ」

私はそれを手渡す。
何故かちょっとだけ胸が痛くなる。

「ありがとう」

男の子はそれを広げる。
黙って読み始める。

何故か分からないけれど、そばにいたいと思った。
その男の子が今にも泣いてしまいそうな気がしたから。
私はこの人の隣にいたい。