きみの春に、溶けていく -プロローグ-

三学期が始まって、あっという間に2月になった。
2月はいちばん寒い。
だから私はお気に入りのマフラーをして、学校へ行く。
最近は学校へは1人で行ってる。
というか、ずっと1人だったよね。
何言ってるんだろ。

「灯、明日のミニテスト、大事な範囲どこだっけ? ヤマセン、点数悪いと居残りにさせるから困るよね」
「ヤマセンのミニテストなんてなくない? 栞の勘違いだよ」
「いや絶対言ってたし。てか今日の授業で言ってたし。最近の灯、史上最強にぼーっとしてるね。前は『ヤマセンのテストなんて問題文読まなくても解ける』とか豪語してたじゃん」

そんなこと言ってたかな?
私が覚えてるのは精神科の先生が「治療は全て順調です」という声だけ。あとは深い湖に沈んでくみたいに、何も見えない。
ただ、目の前にあることに集中する。

施設に帰る、学校に行く、たまに病院にいく、また施設に帰る。その繰り返し。

「もうほんとに変なの!」

私の世界はどんどん静かになる。
雪の降るこの街のように音も光も痛みさえ吸収されていく。

「それに朔くんはもういいの!? 最近イチャイチャしてないじゃん」

「え?」

「えって、朔くん! 灯の彼氏さま!!」

「ーーそれ、誰?」

「え? どうしたの、灯」

心配そうに顔を覗き込む、栞。
頭が痛い。
何故か分からないけれど、とてもなにか大事なことを忘れている気がする。