また、春が来た。
また、桜が咲いた。
また——彼女が笑った。
それなのに、俺だけが知っている。
この季節が、もう何度目の“春”なのか。
三月二十五日。
午後五時四十分。
あの放課後、時計塔の鐘が鳴るとき
—— あかりは、必ずいなくなる。
最初は事故だった。
雨上がりの屋上で、濡れた床に足を滑らせた彼女を、 俺は間に合わずに見送った。
その瞬間、時計が止まった。
時間が、壊れた。
気づけば、俺は一週間前の教室にいた。
それが始まりだった。
俺は何度もやり直した。
放課後の行き先を変えて、 会話の順番を変えて、 言葉を飲み込んで、 あるいは伝えて。
けれど、結果は変わらなかった。
あかりは必ず、いなくなる。
──それでも、やめられなかった。
彼女が笑うその瞬間を見るために、 もう一度だけ“同じ時間”を繰り返した。
そして今日。
転校初日の教室で、 彼女が俺を見た瞬間——ほんの一瞬、目を見開いた。
まるで、思い出しかけたように。
ほんの少しだけ、心が震えた。
もしかしたら、 今回だけは、違う結末にできるのかもしれない。
また、桜が咲いた。
また——彼女が笑った。
それなのに、俺だけが知っている。
この季節が、もう何度目の“春”なのか。
三月二十五日。
午後五時四十分。
あの放課後、時計塔の鐘が鳴るとき
—— あかりは、必ずいなくなる。
最初は事故だった。
雨上がりの屋上で、濡れた床に足を滑らせた彼女を、 俺は間に合わずに見送った。
その瞬間、時計が止まった。
時間が、壊れた。
気づけば、俺は一週間前の教室にいた。
それが始まりだった。
俺は何度もやり直した。
放課後の行き先を変えて、 会話の順番を変えて、 言葉を飲み込んで、 あるいは伝えて。
けれど、結果は変わらなかった。
あかりは必ず、いなくなる。
──それでも、やめられなかった。
彼女が笑うその瞬間を見るために、 もう一度だけ“同じ時間”を繰り返した。
そして今日。
転校初日の教室で、 彼女が俺を見た瞬間——ほんの一瞬、目を見開いた。
まるで、思い出しかけたように。
ほんの少しだけ、心が震えた。
もしかしたら、 今回だけは、違う結末にできるのかもしれない。



