座敷牢令嬢は今日も謎を解く

その人は立派な燕尾服を身に付けて、帽子をしっかりと被っている。
したたっていた水滴はきれいに乾き、その頬には赤みが戻ってきた。
「そういえば、あなたの遺体も発見されたのよね」
キヨは門に近づいて声をかけた。

田中がゆっくりを帽子を脱ぎ、そして一礼する。
その表情はとても穏やかだ。
もう少しすれば田中を殺害したことも露呈するだろう。
そうなったときに田中はようやくここから解放される。
もう少しの辛抱だからね。

心の中でそう話しかけたときだった。
「キヨ様!!」
元気な声が隣の団子屋から聞こえてきた。
「トミ!」
菅原家の使用人として働いていた者たちにはできるだけ仕事を斡旋しておいた。