田中が死んだ本当の理由を知ったキヨはジッと田中を見つめたまま動くことができなかったのだ。
「ひまわりをありがとう」
ようやく口に出した言葉がそれだった。

あれは座敷牢を彩るだけではなく、キヨをここまで導いてくれた。
「お役に立てて大変うれしいです」
田中が礼儀正しくお辞儀をする。
キヨはそんな田中の胸にそっと耳を押し当てた。

冷たい体。
聞こえてこない心音。
暗く冷たい井戸の中で孤独に死んでいった田中の悲痛な気持ちが伝わってくるようで、胸が張り裂けそうだ。
「助けてくれてありがとう」
あなたのような人が夫ならよかったのに。
その言葉は飲み込んだ。
今はまだあの悪魔のような人の妻だから。