ミツの他にも留袖姿の親戚が多く集まってきていた。
「キヨ、大丈夫ね?」
家の奥から心配顔で飛び出してきたのはようやく自分の支度を終えたキヨの母親だった。

今の今までキヨにつきっきりで準備を手伝っていたので、少し髪が乱れている。
「大丈夫よお母さん」
返事をしてその右手を両手でギュッと握りしめる。
母親の不安はよくわかった。

キヨの結婚は明らかな政略結婚であり、キヨよりも2歳年上の20歳の人が相手だと知っているだけで、まだ顔も見たことがなかった。
不安になるもの無理はないが、別に珍しい話でもない。
キヨの友人は一足先に遠く北陸の人と政略結婚しているから、みんな似たようなものだと思っていた。