そんな孤独な中
『田中、少しいいか』
久しぶりに大旦那様から声がかかったので喜び勇んでその後を追いかけた。
『なんでしょうか大旦那様』
ついてい行った先には裏庭で古井戸の横に秀雄が待っていた。

『秀雄様？』
『こっちだ』
足を緩める田中の腕を大旦那様がぐいっと引っ張り、井戸に寄せた。
そのすきに秀雄が田中の背中を押したのだ。
体勢を崩した田中が井戸へ向けて前のめりになる。
その両足を大旦那様と秀雄が同時に持ち上げて……背の高い田中の姿は井戸の奥底へと吸い込まれていったのだった。

☆☆☆

「ゆ、幽霊だ！！」
逃げ惑う菅原家の人々も視界に入らなかった。