座敷牢令嬢は今日も謎を解く

『もう少しで軍への仕出しがすべて菅原料亭で行われるのに』
『それはどうしようもないですよお父さん。一部は東郷家の親戚が担っているんですから』
『それはわかっているが、どうもなぁ』
大旦那様と旦那様のこんな会話は田中もよく耳にしていた。

菅原家としてはなんとしてでも仕出しの範囲を広げたく、その気持は田中にも理解していた。
ただ、そのやり方がどんどん卑劣なものへと移っていくとは思いもしなかった。

『お父さん、いい案を思いついたよ！』
最初はほんの冗談のような笑い話しから、東郷家没落計画は始まった。
誰も秀雄の話など本気にはしていなかった。