座敷牢令嬢は今日も謎を解く

だけど期待いっぱいに嫁に来た先へ幽閉された悲しみと怒りなら、嫌というほど理解できる。
キヨは必死で大奥様の体を押し返し、そして馬乗りになってその頬を何度もはつった。
人を叩くのは生まれて始めてで、自分の手もひどく痛かった。

「やめろ!!」
秀雄が我に返ったように叫んでキヨを止めに入る。
その間に大旦那様が資料へと走った。
そして手を伸ばしたのだが……資料の向こう側に見えた黒い靴に唖然としてそのまま腰を抜かしてしまったのだ。

「お、お前は!!」
腰を抜かしたまま指っさした先に立っていたのは頭から足先までずぶ濡れで、燕尾服を着た田中だったのだ。
「田中さん!?」