座敷牢令嬢は今日も謎を解く

自分が女中用の廁へ行く前に、誰かが怪文書を発見してしまったのだ。
「悪知恵は働くけれど詰めが甘いのね」
キヨが腕を組んで憤怒の表情を浮かべる。
あれもこれも失敗に終わったから良かったものの、どれかひとつでも成功してればキヨの親戚の家は大打撃を追っていたはずだ。

怒りが腹の底からふつふつと湧き上がってくる。
「これを知らせることができてよかった」
田中が音もなくスと立ち上がる。

キヨはその燕尾服がキラキラと輝いていることに気がついた。
裾の方には水滴がたまになって今にも落ちそうだ。
輝いているのではなく、濡れているのだ。
「田中、あなた……」