その瞬間からキヨは秀雄の妻になったも同然だったはず。
だけどそれはキヨの思い違いだったのかもしれない。
まだ見たことのない秀雄に思いを馳せて、どんな人だろうかと考えて眠れなくなった夜は、キヨにしかなかったことだったのだ。

秀雄もきっと同じ気持ちなどという甘い考えはここへ来て一時間もしない間に打ち砕かれた。
ふたりは次のキヨの言葉を待つこと無く、その場から立ち去ってしまったのだった。