「菜穂、おっはよー。」
適当にスマホのどうでもいいような動画をスクロールしていたら、大学で常に一緒にいる夏希が隣に座ってきた。
「夏希、おはよ。」
「昨日言ってた男どうなったの。リピあり?」
夏希が言ってる昨日の男とは今朝まで一緒に寝てた隼人のことだろう。
「無し。多分もう会うことないかなー。」
「ははっ、菜穂いつか刺されるよー。前、写真見せてくれた時イケメンだったのに。」
夏希はサラサラの黒髪ロングをかき上げて、呆れるように笑った。
「うーん、なんだろ。将来が見えなかった、て感じ。」
「そういうところだけ真面目だよね。うちらまだ学生なんだからさ、経験も大事だよ。」
「いや、ここまで来たら将来考えちゃうって。」

私は生まれてから今まで一回も彼氏という存在を作ったことがない。
男が嫌いとか、女が好きじゃなくて、なぜかできない。
毎回タイミングを間違えて、気になった人と付き合うことができない。
また、これはジンクスなのかもしれないけど私が気になった人全員彼女ができてしまう。
だから、恋愛すると自分だけ燃えて疲れてめんどくさくなってしまう。

「今は好きな人いないから人生ストレスなく生きれるわ。」
「まぁ菜穂が恋してる時、見てて辛そうだからね。光さんとは連絡切ったの?」
「切ってはないけど、前みたいな恋愛感情はないかな。」
「さっさと切れよ!まじで菜穂に彼氏できたら安泰なのになー。」
夏希が言う”光さん”とは私が2年前に居酒屋で出会った2つ年上の男。
最初はだらだらと連絡してて、気づいたら私が光さんのことを追ってしまった。
結果、都合のいい関係になってしまって、光さんは彼女がいるのにも関わらず、私は光さんとずるずると関係が続いてしまっていた。
まぁ、今となってはもう恋愛感情がなく、就活の相談などをしているから連絡を取っている。
「てか、今日暇なら久しぶりにCENTURY行こうよ。」
CENTURYとは私と夏希が昔よく行ってたカラオケバー。
最後に行ったのが半年前くらいで、それから互いに就活だったりアルバイトなどで行けなかった。
「あー、いいよ。多分まだボトル残ってる気がするし。」
私がCENTURYを行かなくなった理由は他にもある。
夏希は覚えているか分からないけど。
他に夏希と雑談していたら教室に先生が入ってきて、そのままゼミが始まった。

「今日は飲むぞー!」
夏希は張り切るようにガッツポーズをした。
「私、夏希が酔って介抱するの嫌なんだけどー。」
「大丈夫大丈夫、明日何にもないから最悪そこらへんで寝るし!」

CENTURYがあるビル前に着き、エレベーターを待つ。
半年ぶりでやけに緊張する。