恋のリハーサルは本番です

日本を発って、もう三か月が経ちました。
そちらは、もう春でしょうか。
こっちは相変わらず、空がやけに高くて、夜になると街の灯りが星みたいに散らばっています。
正直に言うね。
毎日、うまくいっているわけじゃありません。
オーディションは落ちてばかりだし、英語だって、頭では分かっているつもりなのに、口に出すと別の意味になったりする。
帰り道、何度も「何やってるんだろう」って思いました。
それでも、不思議と後悔はしていません。
逃げた、とは思わない。
あの楽屋を振り返らなかった自分を、いまはちゃんと信じられています。
日本にいた頃、舞台に立つたび、
「ここが自分の居場所なんだろうか」って、ずっと考えていました。
拍手をもらっても、スポットライトを浴びても、
心のどこかで、次の扉を探していたんだと思います。
こっちでは、誰も僕の名前を知りません。
肩書きも、過去の実績も、全部ゼロです。
でも、その分だけ、役に向かう気持ちは正直でいられる。
評価されない怖さより、嘘をつかなくていい自由のほうが、今は大きい。
もし、あのとき引き止めてくれていたら、
もしかしたら、僕は行かなかったかもしれない。
だから、背中を押してくれたこと――
何も言わずに、ただ見送ってくれたことに、感謝しています。
まだ「俳優になった」と胸を張れる段階じゃない。
でも、少なくとも、
夢を目指している自分を、嫌いにならずにいられています。
いつか、
「海外へ行った翔」じゃなく、
「役として名前を呼ばれる翔」として、また手紙を書けたらいいですね。
その日まで、僕はここで踏ん張ります。
あなたも、どうかあなたの場所で。