婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「すごいと思うけど、それって本来は国がするべき対応よね」
「そうだな」
 アリーシャに、地方に出て気になったことがあれば教えてほしいと言われていた。このことは、伝えるべきだろう。
「あ、こっちかな?」
 広い街道を歩いていると、途中に分かれ道があった。
 土を踏み固めただけの簡素な道だが、人通りは多かったようで、それなりの道幅がある。
「そうだな。クロエ、ここからは注意して」
「うん。あ、ちょっと待って」
 先を歩こうとするエーリヒに声を掛けて、防御魔法を使う。
 魔女のクロエには、呪文も魔法陣も必要ない。
「エーリヒを守ってくれますように!」
 ただそう願うだけで、魔法は発動する。
「物理攻撃も魔法攻撃も、これで通用しないと思う」
「クロエは?」
 エーリヒが心配そうな顔に言ったので、自分にも防御魔法をかけておく。
「私にもかけておくね。……うん、これで大丈夫」
 敵が透明化するのなら、どこに動くかわからない。
 クロエが自分にも防御魔法をかけると、エーリヒは安心したようだ。
 ふたり並んで歩けるくらいの道幅だが、それでも用心のため、エーリヒが先頭を歩き、クロエはその背後に続く。
 道の両側には木が生い茂っていて、高く伸びた枝が空を覆い隠し、早朝だというのに、薄暗い。
 土を踏み固めただけの道には、ときどき小石が混じるようになり、歩きにくくなってきた。
(なんか、林間学校の早朝登山を思い出すかも)
 地名や学校のことはまったく覚えていないのに、こうして山を登ったことがある、という断片的な記憶だけ、思い出す。
 そんなときは、無理をして思い出さないようにしていた。