婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 優しくそう言われて、クロエは瞳を閉じた。

 そして、翌朝。
 ふたりは身支度を整えると、魔物が目撃されている場所に向かった。
「朝食のパン、おいしかったね」
 焼きたてのパンが提供され、つい食べ過ぎてしまったくらいだ。
「俺は、クロエの料理の方が良い」
 そう言うエーリヒは、あまり食べていなかったような気がする。
 これだけ動いて、しかもそれなりに鍛えているのに、あんなに小食で大丈夫なのだろうか。
(人体の不思議……)
 ふと気になって、自分の腕や腹を触ってみる。
(う、うん。まだ大丈夫。まだ、許容範囲内ね)
 いざとなったら、魔石を大量に作ればいい。
 体力を消耗してきっとダイエットにもなるし、魔力も増えて良いことだらけだ。
 そんなことを考えながら、少しだけ踵を上げて歩いてみる。
(こんな運動があったような気がする。効果はあるのかな?)
 エーリヒはそんなクロエを見て不思議そうな顔をしていたが、思い立って変な運動をするのはいつものことなので、何も言われなかった。
 この町から少し離れた山間に、小さな集落がある。
 魔物は、その集落に向かう道に出没するらしい。
 集落に住む者にとっては、仕事や生活のために毎日通る道である。それが、例の魔物が出没することによって、命がけの道のりになってしまい、とても困っていた。
 そこで集落の人たちがギルドに相談したところ、ギルド側で対応が必要と判断し、指名依頼にしてくれたようだ。
「じゃあ、今回の依頼主はギルドなの?」
「そういうことになる。人々の生活が脅かされている場合に限り、ギルドが依頼主となって問題の解決に尽力するそうだ」