婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「まさか、攻撃魔法三発で、あんなに偉そうにしていたとは」
「そうね。私も、耳を疑ったわ」
 ふたりで顔を見合わせて笑った。
「エーリヒ」
 そっと名前を呼んで、甘えるように身を寄せる。
「私にとっても、エーリヒは人生の希望だよ。婚約を破棄されたあのときに、クロエは死んでしまっていたかもしれない。それをここまで連れてきてくれたのは、エーリヒだから」
「……ああ」
 エーリヒはクロエの言葉に小さく頷いた。
 そうして、自分の胸に頬を寄せるクロエの黒髪を、優しく撫でる。
「クロエがいれば、他は何もいらない。ずっと一緒生きて行こう」
「うん。約束よ」
 目を閉じると、唇に優しい熱を感じた。
 エーリヒは無事に、『特別依頼』を果たした。
 目的を達成したので、王都に戻らなくてはならない。
(思っていたよりも早く、帰ることになったなぁ)
 もう少し旅を楽しみたかったと思うが、サージェがあの様子では、時間が経過すればするほど、また犠牲者が増えたのかもしれない。
 だからここで、彼を取り押さえることができてよかったのだろう。
「王都に戻る?」
 そうなるだろうと思って聞いた言葉だったが、エーリヒの返答は予想外のものだった。
「特別依頼を果たしたから、そうしなければならないところだが、魔物退治の依頼が何件かきていた。どうやら指名依頼のようだから、それを果たしてからになる」
「……そっか」
 まだもう少し、旅ができる。
 そう思うと、楽しみだった。


「エーリヒって、氷の剣士って呼ばれているらしいよ」
 クロエとエーリヒは、新規の依頼があった町を訪れていた。