婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 女性は嫌いでも、少年のトリーアなら平気なのだろう。エーリヒがこんなふうに誰かを気に掛けるのは初めてで、クロエも何だか嬉しくなってしまう。
 ふたりには、また会うこともあるかもしれない。

 宿に戻ると、クロエはエーリヒに、サージェの魔力を封印したことを伝えた。
「魔力を、封印?」
 そんなことができるのかと驚くエーリヒに、クロエは経緯を説明した。
 自分の魔力を封印したときと同じように、扉を閉めるイメージを使ったこと。
 そしてサージェには、その扉を開けることはできないことを説明した。
「あの人は、魔力を持ってはいけない人だと思ったの」
「そうだな」
 エーリヒは、そんなことができるのかと驚いた様子だったが、クロエの行動は間違っていないと言ってくれた。
「魔法が使えなければ、もう逃亡することはできない。魔石も作れないのであれば、貴族に飼い殺しされることもないだろう」
「うん、そうね」
 サージェのことは許せないが、これから貴族に酷い目を合わされたりしたら、少し気に病んでしまうだろう。
「それにしても、クロエの魔法はすごいな」
 エーリヒは右腕を掲げて、感心したように言う。
「傷は付かなくても、衝撃くらいは覚悟していたが、それもなかった」
「ごめんなさい。あんなに挑発する必要はなかったね」
 先ほどリリンとトリーアには謝罪したが、エーリヒはまだギルドから戻ってきていなかった。
 だからあらためて謝罪すると、エーリヒは笑ってクロエを抱き寄せる。
「むしろ痛快だった。あの男は、あれくらいしないと自分の実力がわからないだろう。それにしても」
 そう言ってエーリヒは楽しそうに笑う。