けれど余計な口は挟まずに、静かに彼女の話を聞く。
「そのことで、キリフ殿下の立場はかなり悪くなっている。自分勝手な言動で、ひとりの令嬢を失踪するまで追い詰めたのだから、自業自得よね」
そして、ここまで事が大きくなってしまうとは思わなかったキリフの恋人は、さっさと地方に逃げ帰ったそうだ。
どうやら地方貴族の令嬢だったらしい。
貴族ならば、この王都の出入りは自由である。
自分たちがこんなに苦労をしているのに、あっさり王都から出たことだけは、少しだけ羨ましい。
そしてクロエ不在のまま、ふたりの婚約はキリフの不義を理由に、メルティガル侯爵家の方から解消された。
(よかった……)
キリフとの婚約が正式に解消になったと聞き、クロエはひそかに安堵する。
もう二度とメルティガル侯爵家に戻るつもりはないとはいえ、あんな人と婚約したままなのは不本意だ。
焦ったキリフは、新しい婿入り先を必死に探している。
彼は王子とはいえ、王位継承権からは遠く、婿入りして臣下になることは決定している。
けれど王命であるはずの婚約を軽視し、浮気をしていたという彼の悪評は、すでに地方貴族に至るまで知れ渡ってしまった。
当然、次の相手など見つからない。
さらにメルティガル侯爵によって、クロエに対する慰謝料まで請求されてしまい、かなり切羽詰まっている。
(私がいないのに、慰謝料を請求するなんて。よほどメルティガル侯爵家を侮られたのが、悔しかったのね)
名家メルティガル侯爵家の令嬢を捨てて、地方貴族の娘を選んだ。
それがよほど、父のプライドを傷付けたとみえる。
「そのことで、キリフ殿下の立場はかなり悪くなっている。自分勝手な言動で、ひとりの令嬢を失踪するまで追い詰めたのだから、自業自得よね」
そして、ここまで事が大きくなってしまうとは思わなかったキリフの恋人は、さっさと地方に逃げ帰ったそうだ。
どうやら地方貴族の令嬢だったらしい。
貴族ならば、この王都の出入りは自由である。
自分たちがこんなに苦労をしているのに、あっさり王都から出たことだけは、少しだけ羨ましい。
そしてクロエ不在のまま、ふたりの婚約はキリフの不義を理由に、メルティガル侯爵家の方から解消された。
(よかった……)
キリフとの婚約が正式に解消になったと聞き、クロエはひそかに安堵する。
もう二度とメルティガル侯爵家に戻るつもりはないとはいえ、あんな人と婚約したままなのは不本意だ。
焦ったキリフは、新しい婿入り先を必死に探している。
彼は王子とはいえ、王位継承権からは遠く、婿入りして臣下になることは決定している。
けれど王命であるはずの婚約を軽視し、浮気をしていたという彼の悪評は、すでに地方貴族に至るまで知れ渡ってしまった。
当然、次の相手など見つからない。
さらにメルティガル侯爵によって、クロエに対する慰謝料まで請求されてしまい、かなり切羽詰まっている。
(私がいないのに、慰謝料を請求するなんて。よほどメルティガル侯爵家を侮られたのが、悔しかったのね)
名家メルティガル侯爵家の令嬢を捨てて、地方貴族の娘を選んだ。
それがよほど、父のプライドを傷付けたとみえる。


