婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 魔法で人を何度も攻撃した彼を、このままにしてはおけないと思う。
 しかも相手は屈強な冒険者や騎士ではなく、若い女性と幼い少年だ。
 今は魔力が尽きた状態なのでおとなしく捕縛されているが、回復すればまた、魔法を使って逃げようとする。
 ギルドや騎士団のほうでも、今度こそ逃げられないように徹底するだろうが、この国は魔法に関しては後進国である。
 しかも彼は自分の目的のためならば、人を傷付けることを躊躇わない。
 非常に危険な人物だ。
(この人に、魔力を持たせてはいけない)
 クロエは、サージェを見つめた。
 自分の魔力を封じたときのように、扉を閉めて鍵を掛けるイメージで、サージェの魔力を封印する。
 クロエの場合、鍵は自分で持っていたが、鍵を持たないサージェに、この扉を開けることは不可能だ。
 もう二度と、自分の意志で魔法を使うことはできないだろう。
 だが、魔力の尽きた状態のサージェは、自分の魔力が封印されてしまったことにも気付かない。
「君は騙されている。貴族なんて皆、魔石目当てしかいない。いずれ捨てられてしまうぞ」
 だから、まだそんなことを言って悪あがきをしている。
「俺は魔石など必要としていない」
 エーリヒはサージェを見下ろしてそう言うと、クロエに手を伸ばした。
 もちろんクロエも、迷わずにその手を取る。
「クロエを愛したのは、彼女が魔導師として目覚める前だ。初めて会ったときから、クロエは俺の、ただひとつの希望だった」
 そう言って、まるで祈りを捧げるかのように跪き、握ったクロエの手を自分の額に押し当てる。
「俺の心も体も、命さえも、すべてクロエのものだ」