婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「あなたに怪我はさせたくないのですが……」
 そう言って、憐れむような視線を向けてきた。
 だがクロエの傍にいるエーリヒは、理解できていないのはサージェのほうだとわかっている。だからクロエのやりたいようにさせてくれた。
 それでも、いつでもクロエを庇って飛び出せるように、臨戦態勢のままである。
「では、もう一度」
 サージェはそう言って冷笑を浮かべると、片手を前に突き出した。
「私の忠告を聞かない、あなたが悪いのですよ」
 そう言って放たれたのは、電撃の魔法。
 ギルドでエーリヒを攻撃したことがある、あの魔法だ。
(あのときのこと、まだ許していないんだから)
 どれだけ痛いのか、自分で受け止めてみればいい。
 そう思ったクロエの気持ちが、魔法に反映される。
「うわあっ」
 サージェの攻撃は、クロエの魔法で作り出した障壁に当たり、そのまま本人に跳ね返った。
 思わぬ衝撃に、サージェは悲鳴を上げて倒れ伏す。
 攻撃魔法を、人に対して放ってはいけない。
 それは魔法に関しては後進国であるこの国でさえ、明確に定められていることだ。
 だがサージェは、それを何度も破っている。
 魔法で攻撃されることがどれほどの衝撃か、自分で体験してみればいい。
 そう思ったクロエだったが、サージェはまだ悲鳴を上げて転げまわっている。
(そ、そんなに?)
 エーリヒは声も上げなかったことを考えると、サージェは相当、打たれ弱いのかもしれない。
 少しだけ心配になる。
 それに、今のは人を魔法で攻撃したことになってしまうのだろうか。
(魔法を反射しただけ、だから……)