婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 そう言いながら、隣にいる姉を見上げて溜息をつく。
「こちらが何か言う前に、事情があるので匿ってほしいと。それが目的で、僕たちを助けたようです」
「そんな、悪意のある言い方……」
「事実だと思うよ。後から知ったんだけど、僕たちの少し前に通った人たちは、魔物に襲われて被害者が出ている。目撃情報もあったから、あの人がそこにいたのは間違いないのに、彼らのことは助けなかった」
「……」
 リリンは何か言いたそうだったが、トリーアに睨まれて口を閉ざした。
 サージェはそこに魔物がいると知っていて、自分に都合の良い人が通りかかるのを待っていたのだろう。
 そこでリリンはサージェの嘘にすっかりと騙されて同情してしまい、彼を助けようとした。
 冒険者として登録していたことから、色々な伝手を使って情報を調べ、それを逐一報告していたようだ。
「銀髪の剣士と黒髪の魔術師が探しているって聞いて。それを伝えたら、その黒髪の女性は自分の恋人だと言っていて」
「ありえないわ」
 話を聞かなくてはと思うのに、つい口を挟んでしまう。
「私の恋人はエーリヒだけ。今は婚約者でもある。彼と一緒に生きるために、頑張って魔石を納品していたのに、思い込みでエーリヒのことを勘違いして、いきなり魔法で攻撃するような人よ」
 当時のことを思い出すと、今でも怒りがこみ上げる。
「勝手にそんなことを言われて、迷惑しているの」
「クロエ」
 思わず手をきつく握りしめると、エーリヒがそっと手を取ってくれた。
 そんなふたりの姿は、どう見ても互いに想い合う恋人同士にしか見えなかったことだろう。