婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 自分が不在の間に、クロエのところに押しかけたリリンを、エーリヒは許せない様子だった。それでもリリンを騙したサージェと、彼女に情報を漏らした人が悪いのだと、クロエは説得した。
「それに、エーリヒが気を付けろと言ってくれたから、魔法で施錠したの。だから、大丈夫」
「……クロエが、そう言うなら」
 最後には、エーリヒも納得してくれた。
「姉さん。こんなに迷惑をかけた姉さんを、クロエ様は庇ってくださった。姉さんからも、きちんと謝罪して」
「でも」
 弟にそう言われても、リリンは迷っていた。
「まだあの人を庇うなら、僕はもう姉さんと一緒には居られない」
「そんな……」
 リリンはショックを受けたような顔をしていたが、クロエも、弟の真摯な訴えさえ聞けないようなら、もう話し合いをしても無駄だと思っていた。
「わかったよ。ちゃんと謝るから。……申し訳ありませんでした」
 そう言って、クロエに向かって頭を下げる。
 謝罪の言葉を口にしながらも、まだ納得していなさそうな様子にエーリヒは顔を顰めたが、クロエはそんな彼の腕に手を置いて、首を横に振る。
 クロエは、謝罪を求めているわけではない。
 ただ話を聞きたいだけなのだ。
「サージェと、どうやって出会ったの?」
 そう尋ねると、答えてくれたのはトリーアだった。
 移動中に魔物に襲われて。それを助けてくれました」
「えっ、そうなの?」
 誰かを攻撃している姿しか見たことのないクロエには、驚きの答えだった。
 けれどトリーアは、続けてこう言う。
「助けてもらったのだから、お礼を言おうと思ったのですが……」