婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「でも、サージェを逃がされてしまったら、面倒なことになるでしょう?」
 自分のほうが適任だと繰り返し訴えても、スラム街は本当に危険だからと、エーリヒは折れなかった。
「スラム街にいるのは、移民だけではない。犯罪に手を染めている者もいる」
 だから、クロエを連れていくわけにはいかないと言う。
「うーん。じゃあ、誰かが町のほうに出てくるまで待つ、とか。別の場所に連れてきてもらうとか……」
 いつもエーリヒに無理をしないでと言っているクロエが無茶なことをして、心配を掛けてしまうわけにはいかない。
 おそらく移民たちが全員で、サージェを庇っているわけではないだろう。
 あの胡散臭さならば、絶対に不審に思っている者もいるに違いない。
 そう思って、別の案を出してみる。
「わかった。それなら何とかなりそうだ。明日、町に普通の宿を借りておくから、クロエはそこで待っていてくれ」
 エーリヒもクロエの案に賛同してくれた。
 移民たちもずっとスラム街にいるわけではなく、仕事や食料を求めて、町の中心部まで出てきている。
 エーリヒはそのタイミングで声を掛け、クロエのところに連れてくるつもりのようだ。
「うん、わかった」
 クロエは素直に頷いた。
 できれば、ほとんどの移民が彼のことを胡散臭いと思っていてほしい。

 翌日、クロエは冒険者風の服に着替えると、エーリヒと一緒に町の中心部に向かう。
 クロエたちが泊まっている宿は、騒がしい町の中心部からは離れている。しかもその宿に到着したのは真夜中だったので、町を歩くのは初めてだ。
(ちょっと雰囲気が荒んでいるかも……)