婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 さっぱりしてから眠りたいと思い、さっと汗を流すことにする。
 少しだけのつもりが、広い湯船が気持ち良くて、つい長湯をしてしまった。着替えて寝室に向かうと、エーリヒはもう眠っている様子だった。
 クロエが来るのを待っていたのか、手に本を持ったままだ。
「遅くなって、ごめんね」
 小さくそう呟いて、本をしまい、毛布を掛けてやる。
「……クロエ?」
「あ、起こしちゃった?」
「ん」
 エーリヒは手を伸ばしてクロエを抱き寄せる。
「温かい」
 そう言う彼は、毛布も掛けずに眠っていたので、少し寒いようだ。
 クロエはエーリヒの冷たい体を温めるように、そっと寄り添った。
「おやすみ、エーリヒ」
 そう呟いて、目を閉じる。

 翌朝。
 食事を終えたあと、ふたりで今後のことを話し合う。
「数日前、この町に数人の移民が移動してきたが、やはりその中にサージェらしき男がいたそうだ」
 エーリヒはそう説明してくれた。
「前に聞いた話、本当だったのね。でも、まさか移民の中にいるなんて」
 サージェも移民だが、国籍を取得してギルドの正職員になった。
 だから自分は、他の移民たちとは違うと考え、むしろ移民の冒険者たちには厳しかったと聞く。
 それがまさか、移民たちに混じっているとは思わなかった。
「そうしなければ、移動できなかったかもしれないけれど……」
 指名手配犯となった今、堂々と歩けるはずもない。
 だが、よく移民たちが、同行を許したものだ。
 指名手配犯のサージェの逃亡を手伝ったと言われて、厳罰に処される可能性だってある。
「それが、かなり自分の都合の良い話をしていたようで」