婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 まるでエーリヒが、魔導師であるクロエを利用して、自分の名声を上げているようではないか。
「ひどい噂だわ。訂正しなきゃ」
「いや、クロエに助けられているのは事実だからね。それに、どんなに俺が気に入らなくても、噂を流すが精一杯だろう」
 エーリヒの目立つ容貌と、移民の女性という組み合わせはかなり目立っていたようで、真実の愛という言葉とともに、ふたりの話がこの町にも広まっていた。
 町ではエーリヒの噂を聞いて声を掛ける女性もいたようだが、彼はいつも無視している。ギルドでも、クロエさえいればいい。俺にはクロエだけだと繰り返し語っていた。
 だからクロエは移民ではあるが、魔石が作れる魔導師で、しかも貴族の養女になったということも知られたようだ。
 それを知ったからには、接触してくる者はいないだろうと、エーリヒは語っていた。
 そもそも貴族専用の宿に滞在しているので、接触のしようがない。
 ここを使うように言ってくれたアリーシャはきっと、そこまで考慮してくれたのだろう。
 この町だけではなく、日帰りで移動できる距離の特別依頼も何件か引き受けたエーリヒは、クロエの手助けもあり、すべてを成功させていた。
「すごいね」
 クロエは、そんなエーリヒが誇らしく思えた。
 魔物退治は、人々を助けることにも繋がる。
 この頃にはサージェの噂も少しずつ集まるようになり、もうすぐ次の町に移動することになっていた。
 思っていたよりも長く滞在してしまったが、そのお陰でサージュの居場所もだいたい把握することができた。
 魔物退治も捗ったことだし、むやみに移動するよりも、有意義な時間を過ごせたかもしれない。