そう言ったアリーシャの表情から察するに、あまり楽観的な話ではなさそうだ。
クロエはエーリヒと顔を見合わせたあと、彼女の話を聞くことにする。
「あの夜会のすぐ後に、カサンドラ王女殿下から抗議があったの」
王女の名前を聞いて、エーリヒの体が僅かに強張る。
クロエはそっと、隣に座っている彼の手を握った。
「エーリヒは自分の近衛騎士だから返してほしいと。それと、アウラー公爵からも」
「あの人から?」
予想外だったらしく、エーリヒは驚いたように聞き返す。
「ええ」
夜会のあと、我に返ったカサンドラは周囲に当たり散らし、大騒ぎをして、国王によって魔法の使えない塔に閉じ込められたらしい。
そんなカサンドラのエーリヒへの執着を目の当たりにして、利用価値があると思われてしまったのかもしれない。
「それと、クロエに婚約の話を持ち掛けてきた者もいたわ」
「私にも?」
驚くクロエの手を握っていた、エーリヒの顔が険しくなる。
「……誰だ?」
「侯爵家の子息と、アウラー公爵家の血筋の者。そして、キリフ王子殿下ね」
「へ?」
かつての婚約者の名前を聞いて、思わず間の抜けた声が出てしまった。
「キリフ殿下って、ジェスタ王太子殿下の……」
「ええ。異母弟よ。彼にはもう後がないから、必死なのでしょう」
アリーシャはそう言って、キリフの今の状況を語ってくれた。
「彼には、婚約者がいたの」
それが、かつてのクロエのことだと知るのは、エーリヒだけだ。
クロエは険しい顔をしたエーリヒを宥めるように、繋いでいた手に力を込める。
「そうだったのですね。でも婚約者がいるのに、どうして私に?」
クロエはエーリヒと顔を見合わせたあと、彼女の話を聞くことにする。
「あの夜会のすぐ後に、カサンドラ王女殿下から抗議があったの」
王女の名前を聞いて、エーリヒの体が僅かに強張る。
クロエはそっと、隣に座っている彼の手を握った。
「エーリヒは自分の近衛騎士だから返してほしいと。それと、アウラー公爵からも」
「あの人から?」
予想外だったらしく、エーリヒは驚いたように聞き返す。
「ええ」
夜会のあと、我に返ったカサンドラは周囲に当たり散らし、大騒ぎをして、国王によって魔法の使えない塔に閉じ込められたらしい。
そんなカサンドラのエーリヒへの執着を目の当たりにして、利用価値があると思われてしまったのかもしれない。
「それと、クロエに婚約の話を持ち掛けてきた者もいたわ」
「私にも?」
驚くクロエの手を握っていた、エーリヒの顔が険しくなる。
「……誰だ?」
「侯爵家の子息と、アウラー公爵家の血筋の者。そして、キリフ王子殿下ね」
「へ?」
かつての婚約者の名前を聞いて、思わず間の抜けた声が出てしまった。
「キリフ殿下って、ジェスタ王太子殿下の……」
「ええ。異母弟よ。彼にはもう後がないから、必死なのでしょう」
アリーシャはそう言って、キリフの今の状況を語ってくれた。
「彼には、婚約者がいたの」
それが、かつてのクロエのことだと知るのは、エーリヒだけだ。
クロエは険しい顔をしたエーリヒを宥めるように、繋いでいた手に力を込める。
「そうだったのですね。でも婚約者がいるのに、どうして私に?」


