婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 けれどエーリヒは、剣の血を布で拭いながら、クロエを見つめる。
「え?」
「魔物の足止めをしてくれただろう。それに、体が軽くなるような感覚があった」
「うん。今度は成功して良かった」
 咄嗟に掛けた魔法だったが、今度はうまく発動したようだ。
 クロエが愛読している魔法図鑑は攻撃魔法ばかりで、あとは治癒魔法が少し載っていたくらいだ。今、クロエが使った補助魔法のようなものは、一切掲載されていなかった。
 けれどクロエは前世の知識から、敵の足止めをしたり、対象の能力を引き上げるような補助魔法を想像し、それを使うことができた。
 クロエが願っただけで叶う、魔女だからこそできたことだろう。
「魔物は想像していたよりも素早くて、硬かった。クロエの魔法がなかったら、もっと苦戦していたかもしれない」
 エーリヒにそう言ってもらえて、クロエもほっとする。
 攻撃魔法は散々だったが、他の魔法で役立てた。
 クロエは魔導師ではなく、魔女だ。
 だから魔法を習わなくても使えるが、それには強く願うことが大切である。
 攻撃魔法をイメージすることはできても、敵を打ち倒したいと思う気持ちが、少し弱かったのかもしれない。
 それに比べて補助魔法は、エーリヒを助けたいというクロエの願いがもとになっているので、とても強くなるようだ。
(広範囲の攻撃魔法で、敵を一掃するのにも、ちょっと憧れていたけど……)
 自分の魔法スタイルには、そういう魔法は合わないのだろう。
「攻撃魔法は、ちょっと苦手かもしれない」
 そう言うと、エーリヒも頷いた。
「そうだね。でも、クロエの魔法のお陰で、楽に勝てた」