婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 はっきりとした記憶はないし、いずれ忘れてしまうかもしれないが、こうして覚えているレシピを作り続けることはできる。
 日本食は苦手な人もいるので、無理をしていないか何度も聞いてみた。でもエーリヒは本当に気に入っているようなので、この梅干しも好きだと思う。
「ご飯は明日の朝炊くことにして、あとは唐揚げと……」
 鶏肉を少し小さめに切り、下味をつけておく。
 下準備が終わったところで、エーリヒが戻ってきた。
「おかえりなさい。どうだった?」
「うん。少し話を聞くことができたよ」
 数日前、移民が何人か集まって、集団で北のほうに旅立ったらしい。
 サージェはその中に紛れ込んでいた可能性があるようだ。
「北の地方にあるギルドで、詳しい調査をしてくれる。その答えを待たなくてはならないな」
 彼らが北にあるどの町に向かったのか、ギルド員が詳しい調査をしてくれているそうだ。
 まだ数日は、この町に滞在する必要があるようだ。
 仕込みをしている様子を見たエーリヒが食べたがったので、ひとり分だけ食事を用意する。
 クロエはエーリヒの分まで、宿の美味しい食事を堪能した。

 翌朝、早起きをしてお弁当を用意したクロエは、エーリヒと一緒に町を出た。
(本当に、町の近くなのね……)
 町から歩いていけるような距離に、それだけ凶暴な魔物が住み着いてしまったら、特別依頼になるのも無理はないかもしれない。
「魔物は、以前は森の奥に住んでいたが、最近は獲物を探して入り口付近まで出てくるらしい」
「そうなんだ……」
 きっとその獲物は、森に足を踏み入れた人間なのだろう。
「クロエ」