婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 この国で魔法を使う者はほとんど魔術師だから、そう思うのは当然だろう。
 魔導師は貴重な存在なので、エーリヒはクロエが目を付けられないように守ってくれたのだろう。
 不特定多数の人間がいる場所で、クロエで魔導師であることを口にしたサージェとは大違いだ。
(まあ、比べるのも失礼なくらいよね)
「助かるよ。特別依頼だから、魔物に関する詳細情報を伝えよう」
 受付の男性に案内されて、奥の部屋に向かう。
 魔物は巨大化した熊のような見た目で、かなり凶暴らしい。
「もう何人もやられている。違約金を惜しんで無茶をして、亡くなった冒険者もいるから、気を付けてくれ」
 そう言われて、深く頷く。
 エーリヒは大丈夫だと言っていたが、無理だと思ったらすぐに撤退しようと決意する。
 違約金よりも、命のほうがずっと大切だ。
 ギルド員は心配そうに、気を付けろと何度も言ってくれた。
 なかなか良い人のようだ。
 それから情報収集を兼ねて、ふたりで町を歩いた。
 もう追われているわけではないので、クロエは顔を隠していない。
 エーリヒはローブのフードを深く被っているが、それは目立つ容貌を隠すためである。
 それでも人目を惹いてしまうようで、すれ違う人たちは、必ず振り返ってエーリヒを見つめていた。
 でも彼の視線は、クロエにのみ注がれている。
 だからクロエも周囲を気にせずに、買い物を楽しんだ。
 基本的な食材と調味料、調理器具はすべてアイテムボックスに入っているので、珍しい地方の食材を選んで購入していく。
 それから本屋に行き、魔物図鑑を買った。