婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 強いことはわかっていたが、圧倒的だった。
 クロエの賞賛に、エーリヒは少し照れたように笑って、手を差し伸べる。
「さあ、宿に戻ろうか。魔物退治の依頼は何件もあったから、次からはクロエも魔法を使ってみよう」
「うん。頑張るから」
 クロエは深く頷いた。
 いよいよ次から、実戦に参加する。
 エーリヒが一緒なので、恐怖心はない。
 ようやく魔法を思い切り使えると思うと、むしろ楽しみだった。
 討伐成功の報告は明日にすることにして、そのまま宿に戻る。
「今日の夕飯、楽しみ。その前にお風呂にも入りたいな」
 地下道は湿気がすごかった。
 しかも倒した魔物の体液が周囲に飛び散り、エーリヒが庇ってくれたのでそれを浴びることはなかったが、それでも少し気持ち悪かった。
 ゆっくりとお風呂に入ってリフレッシュして、明日から頑張るつもりだ。
 まだ夕食の時間には早かったので、先にお風呂に入る。
 そのあとエーリヒが入っている間に、クロエは魔法図鑑を広げて、またイメージトレーニングをしていた。
(今度、魔物図鑑も買ってみよう。どんな魔物がいるのか、事前に知っておくことも大事よね)
 不気味な姿をした魔物ばかりではないらしいが、あまりにもグロテスクだと、冷静に対応できないかもしれない。
 そんなことを思っていると、エーリヒが戻ってきた。
「どうしたの?」
 濡れた髪のまま、何か言いたそうにこちらを見ていることに気が付いて、クロエは開いていた本を閉じた。
 彼はそのまま、クロエの隣に座る。
「また髪が濡れたままだよ。そのままだと、風邪を引くから」