婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 そんなクロエの気持ちが伝わったかのように、エーリヒはこんな提案をした。
「クロエが、あの家と同じように一緒に寝てくれたら、元気になれるんだけど」
「えっ」
 冗談かと思ったが、エーリヒは真剣な顔でクロエを見つめている。
「駄目か?」
「えっと……」
 そう言われて、戸惑う。
「駄目、じゃないけど……。こんなに大きなベッドがふたつもあるのに」
「大きいから、ふたり一緒でも大丈夫だ」
 そう言うと、エーリヒはクロエの隣に座り、先ほどのクロエのように、ベッドに横たわってしまう。
 たしかに、小柄なクロエと細身のエーリヒならば、一緒に寝てもかなり余裕がある。
「クロエと一緒だと、安心して眠れるから」
 愛しい恋人にそんなことを言われてしまえば、恥ずかしがってなどいられない。
「うん、一緒に寝よう?」
 そう告げると、目が眩むかと思うほど眩しい笑顔を向けられる。
「旅の間、ずっとそうしよう」
「ずっと?」
「そう。旅先では、何があるかわからない。クロエを守るためにも、一緒にいたほうがいい」
 同じ寝室なのだから、隣のベッドでも問題なさそうだが、エーリヒが安心するのならば、そのほうがいいのだろう。
「わかった。寝相が悪かったらごめんね」
 先に謝っておこう。
 そう思ったが、エーリヒはこんなことを言う。
「大丈夫だ。むしろ俺のほうが問題かもしれない」
「……あ、たしかに」
 一緒に暮らしていたときのことを思い出し、納得してしまった。
 寝相が悪いというよりは、枕と間違えてクロエに抱きついたり、暑いからと言って上着を脱いだりする。
「だから、問題ない」
「……うーん、そうかも?」