婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「問題は、クロエの力がどこまで大きいものなのか、わからないことだ」
「そうね。今の段階では、たしかに私の力は王女よりも大きいかも、とは思うけど、実際にやってみて、やっぱり無理でしたってなったら大変よね?」
 自分の力を知り、きちんと理解すること。
 それがクロエの課題であり、この旅の意味だ。
 あらためて、それを確認する。

 王都を出てから走り続けていた馬車は、夕方頃にようやく隣町に到着したようだ。
 馬車の窓からこっそりと外を見たクロエは、町の様子も王都とはまったく違うことに驚いた。
 町にはそれなりに人が多そうだが、周囲には農地が広がっていたのだ。
 城壁も、城門もない。
(すごい……)
 城壁に囲まれた王都よりも、開放的で住みやすそうだ。
「クロエ、疲れていないか?」
「うん、平気よ」
 エーリヒにそう聞かれて、クロエは笑顔でそう答える。
 アリーシャが用意してくれたのは、マードレット公爵家所有の馬車で、内装も豪華だし、乗り心地も悪くない。でも朝からずっと乗っていたので、さすがに少し、肩や腰が痛い気がする。
 クロエは馬車から降りると、思い切り手足を伸ばして背伸びをした。
「エーリヒは大丈夫?」
「ああ、問題ない」
 その言葉通り、エーリヒは疲れた様子も見せなかった。
 クロエは周囲を見渡す。
 馬車は、とある宿の前に止まっていた。
 王都に比べると質素なこの町には似つかわしくないくらい、豪華な建物である。
 おそらくここが、アリーシャが言っていた貴族専用の宿だろう。
「今日の宿は、ここね」
 貴族でも宿に泊まるのか、と不思議に思っていると、エーリヒが説明してくれた。