婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 エーリヒはそのまま、まだクロエの髪を撫でている。
「根拠って?」
「まずひとつ。王女には、クロエが魔女であることがわからなかった」
「そうね。それって私の魔法が、王女にも有効だったってことよね?」
 魔女の力はあまりにも強すぎて、同じ魔女にしかわからないと、以前エーリヒが教えてくれた。
 そしてアリーシャは、同じ魔女でもランクがあり、カサンドラは低い方だと言っていた。
 自分よりも高いランクの魔女には、その力が通用しないとも。
「じゃあ本当に、私の力は王女よりも強いの?」
 たしかに、理不尽なほど強い力だと思っていた。
 願っただけで叶えられるなんて、怖いくらいだ。
「もうひとつは?」
「クロエの力が、離れた場所にいたキリフ殿下や団長にも通用したことだ」
「あっ……」
 彼らを呪ってしまったことを思い出し、クロエははっとする。
 今まで彼らから受けた仕打ちを考えると、あれくらいは仕方がないと思うが、たしかにエーリヒの言うように、自分の領域外にいた人間に魔法を掛けることができていた。
「そうなんだ……」
 そんな強い力が自分に宿っているかと思うと、少しだけ怖い。
 不安に思ったクロエを宥めるように、エーリヒが髪を撫でてくれる。
「クロエなら大丈夫だ。自分の力に溺れるようなことはない。あの王女とは違う」
「……うん」
 クロエだって、もしエーリヒの気持ちが自分から離れてしまったら、悲しい。
 でも魔法を使って、無理に彼を束縛しようとは思わない。
 好きだからこそ、大事にしたい。
 幸せになってほしい。
 そう思っている。