婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 でもマードレット公爵家の馬車ならば、長時間待たされることも、馬車の中を見られることもなく、王都の外に出ることができる。
 あまりにも目立ちすぎるので、ずっと使うことはできないが、他の馬車を使うときも、貴族専用の宿から予約するようにと、アリーシャは忠告してくれた。
「色々とありがとうございます」
 クロエは有り難く、その申し出を受けることにした。
 城門を守っているのは、父の部下。
 そしてエーリヒの元同僚達だ。
 彼らには、なるべく関わらないほうがいいだろう。
 クロエは魔女の力で別人になっているし、そもそも父の部下の顔を知らない。
 それでも、騎士が守っている城門を通るときは、かなり緊張した。
 いつか、ここから出て自由になる。
 町に逃亡した直後は、王都を取り囲む城門を見つめながら、そう思っていた。
 それが、マードレット公爵家の馬車に乗っただけで、こんなにもあっさりと出ることができた。
(本当に、出られたのね……)
 振り返ると、王都が少しずつ遠くなっていく。
 つくづくこの国は、貴族だけが有利になるように作られている。
 移民の中には、王都で生まれてしまったために、一生ここから出られない者もたくさんいるに違いない。
 クロエは思わず、スラム街で暮らしている子どもたちのことを思い浮かべた。
 あの子たちは、成長しても自由に王都から出ることはできない。
(そもそも王都に入ったらもう出られないなんて、今はもう意味のない決まりごとなのに)
 奴隷制度と呼ばないだけで、この国にはまだそれが続いているようなものだ。