婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 しかもこの国の騎士は貴族の子息ばかりで、まともに剣を使えない者も多い。
 だからギルドに、特別依頼として指名手配したのだろう。
(自分の立場を守るために、ギルドを利用する。あの人の考えそうなことだわ)
 だがギルド側としても、元正職員が犯罪者になってしまったのだ。一刻も早く、この件は解決したいに違いない。
「そんな依頼をエーリヒが解決したら、ギルドにも貸しが作れるし、貴族社会でも認められるんじゃないかな?」
 サージェには、散々迷惑をかけられた。
 ここは、エーリヒの踏み台になってもらおうと、クロエは考えた。
 どう考えても犯罪行為をした向こうが悪いのだから、遠慮など不要である。
 だが、エーリヒはあまり乗り気ではないようだ。
「たしかに、この依頼を達成できる者はそういない。俺がそれを成し遂げれば、団長も何も言えなくなるはずだ」
 以前、父が団長を務める騎士団の見習いだったエーリヒは、父を団長と呼んでいる。
 けれどその父は、クロエの異母弟と王女カサンドラとの結婚の弊害になると考えて、エーリヒを抹消しようとした。
 でもそのエーリヒが、騎士団が取り逃がした指名手配犯を確保すれば、そう易々と命を狙うことなどできなくなる。
 それを考えても、良い案だと思った。
 エーリヒもわかっているだろう。
 それなのに拒絶する、その理由は。
「……クロエを、あの男に会わせたくない」
 そう言って、クロエを抱き寄せる。
 たしかにサージェは、クロエに執着していた。魔力に優れたクロエのパートナーには、自分こそが相応しいと思い込んでいた。