エーリヒもギルドでのことや、依頼を受けて魔物退治に行ったときの話をしてくれたものだ。
それなのに今のエーリヒは、こうして何も言わずに、ただクロエを抱きしめることが多い。
彼も同意してくれたとはいえ、貴族社会はエーリヒにとって、二度と戻りたくなかった場所だ。何だか思い詰めているような気がして、不安になる。
(ここは、きちんと話し合わないと)
クロエはそっとエーリヒの腕に手を掛けて、顔を覗き込んだ。
「ねえ、エーリヒ」
「うん?」
相変わらず綺麗な顔が、不思議そうにクロエを見つめる。
「私には、何も隠さないで」
真剣にそう告げると、エーリヒは少し戸惑ったような顔をした。
こんなふうに、強要するのは間違っているのかもしれない。
けれどこうやって問い詰めないと、なかなか心の内を話してくれない。
そんな思いを込めてじっと見つめていると、エーリヒは柔らかく微笑む。
「たいしたことではないよ。ただ、俺がもっと強ければ、クロエに人を疑わせることなんて、言わずにすんだと思っただけだ」
たとえアリーシャが裏切ったとしても、それくらい問題はないと言えるくらい、自分が強ければ。
そう思っただけだと、話してくれた。
「エーリヒは強いよ。初めてギルドに行ったとき、驚いたもの」
自分よりも遙かに屈強な男たちを、楽々と倒していたことを思い出す。
「まぁ、剣の腕はそれなりかもしれない。でも、貴族には通用しないからね」
貴族が自ら剣を手に戦うことはない。
彼らが駆使するのは、権力である。
エーリヒが求める強さは、その権力にも屈しない力。
それなのに今のエーリヒは、こうして何も言わずに、ただクロエを抱きしめることが多い。
彼も同意してくれたとはいえ、貴族社会はエーリヒにとって、二度と戻りたくなかった場所だ。何だか思い詰めているような気がして、不安になる。
(ここは、きちんと話し合わないと)
クロエはそっとエーリヒの腕に手を掛けて、顔を覗き込んだ。
「ねえ、エーリヒ」
「うん?」
相変わらず綺麗な顔が、不思議そうにクロエを見つめる。
「私には、何も隠さないで」
真剣にそう告げると、エーリヒは少し戸惑ったような顔をした。
こんなふうに、強要するのは間違っているのかもしれない。
けれどこうやって問い詰めないと、なかなか心の内を話してくれない。
そんな思いを込めてじっと見つめていると、エーリヒは柔らかく微笑む。
「たいしたことではないよ。ただ、俺がもっと強ければ、クロエに人を疑わせることなんて、言わずにすんだと思っただけだ」
たとえアリーシャが裏切ったとしても、それくらい問題はないと言えるくらい、自分が強ければ。
そう思っただけだと、話してくれた。
「エーリヒは強いよ。初めてギルドに行ったとき、驚いたもの」
自分よりも遙かに屈強な男たちを、楽々と倒していたことを思い出す。
「まぁ、剣の腕はそれなりかもしれない。でも、貴族には通用しないからね」
貴族が自ら剣を手に戦うことはない。
彼らが駆使するのは、権力である。
エーリヒが求める強さは、その権力にも屈しない力。


