婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 クロエは、朝から支度に掛かりきりで、とても忙しかった。
 来年、王太子妃となるアリーシャが、率先して色々な準備を整えてくれた。
「私も来年結婚だから、とても勉強になるわ」
 そう言って、甲斐甲斐しくクロエの面倒を見てくれた。
 もちろんリーノも、友人として参加してくれる。
 どちらの姿で参加するか悩んでいたので、可愛い姿がいいと言ったら、喜んでドレスの用意をしていた。きっと可愛らしいだろう。
 この結婚式が終わったら、新婚旅行にジーナシス王国に行くことになっている。リーノが案内してくれて、魔女たちにも紹介してくれるらしい。
 今から、とても楽しみだった。
 結婚式には、たくさんの人たちが参列してくれた。
 クロエがマードレット公爵家の養女になってから、できた友人もいる。移民であってもクロエを差別しない、心優しい人たちだ。
 エーリヒの方には、ギルドの人たちや知り合いの冒険者たちが参列してくれたようだ。
 喧嘩ばかりしていたエーリヒにも、いつの間にか友人ができていた。窮屈そうなスーツに身を包んだ冒険者たちが、笑顔でエーリヒを祝福してくれている。
 中には、クロエが魔石造りに励んでいたときにお世話になったギルド員、ロジェの姿もあった。
 エーリヒを祝福してくれる人たちが、こんなにいる。
 そう思うと嬉しくて、涙が溢れそうになる。
 ベールが上げられ、顔を上げると、愛しそうにクロエを見つめるエーリヒと目が合った。
「クロエ、愛している」
「私も、愛しているわ」
 目を閉じると、温もりが唇に宿る。
 あの日の逃亡は、こんなに優しい未来に続いていたのだ。