婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 スラムの教会で子どもたちの面倒を見ていたトリッドが、リーノの案内役をしている。
 リーノが度々訪れるので、スラムも少しずつ綺麗になっていた。

 キリフは平民になったあとに地方に追放され、教会に身を寄せているそうだ。
 王家に縁の教会らしく、キリフはそれなりに暮らしていると聞く。
 処遇が甘いとエーリヒやリーノは怒っていたが、キリフは身分を剥奪されただけでもかなり絶望したと思うので、それ以上は望まない。
 静かに暮らせているのならば、それで良いと思っている。

 父は身分剥奪に納得できず、投獄された牢でも暴れて、とうとう強制労働所に送られてしまったらしい。
 メルティガル侯爵家は兄か異母弟が継ぐと思っていたが、兄は父が身分を剥奪されたと聞き、母とともに地方で隠棲することに決めていた。
 異母弟は、父がカサンドラとの結婚を計画していると聞いて、とっくに自分の母と一緒にジーナシス王国に逃げてしまったらしい。
 だからメルティガル侯爵家は、父の従兄弟が継ぐことになった。従兄弟は父と違って穏やかな人間らしいので、きっと大丈夫だろう。
 兄が母を連れて行ったことも、異母弟がカサンドラを嫌って逃げ出したことにも驚いた。父の計画は、すべて失敗していたようだ。

 カサンドラは魔力を失ったことですっかりと憔悴し、王家の離宮で静養しているようだ。もう表舞台に出てくることはないだろう。
 たまにエーリヒの名前を呼んで泣いているらしいが、それだけ好きだったのなら、どうして大切にしなかったのだろうと思う。

 エーリヒは、あれからも冒険者として活動している。