婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「クロエが魔女だと? 何てことだ。念願の魔女が、私の娘だったとは」
 ふたりとも、失ったものの大きさに愕然としていて、周囲から向けられる厳しい視線には気が付かない。
「すぐに探し出します。クロエは、私の婚約者で……」
「クロエは私の娘です。メルティガル侯爵は、娘に継がせます」
 あまりにも利己的な言葉に、さすがにカサンドラのことで意気消沈していた国王も苦い顔をした。
「もう遅いわ。クロエ嬢は亡くなっている。これが、王都の闇市で売られていたの」
 リーノが差し出したのは、クロエが失踪当時に着ていたドレスと、宝石である。
 ドレスはアイテムボックスに入っていた物。宝石は、闇市で売ったものを魔法で複製したものだ。
 それを見ても何だかわからない様子の父とキリフに、クロエは呆れてしまう。
(本当に、私のことなんてどうでもよかったのね)
 吹っ切れていたので悲しい気持ちにもならなかったが、エーリヒが厳しい顔をしているのを見て、慌てて宥める。
「エーリヒ、私は大丈夫だから」
「クロエ……」
「もう、関係のない人たちよ」
 心からそう思っていることを伝えると、エーリヒも納得してくれた。
「そうだな」
 目の前ではリーノに問い詰められたキリフと父が、見覚えがないと発言している。
「これはクロエ嬢が、失踪当時に身に付けていたものよ。王都の片隅に転がっていた遺体から剥ぎ取って売ったと、スラムの人から聞いたわ」
 クロエの持ち物だと知って、キリフも父も、絶望していた。
 それは魔女であるクロエが失われてしまったことを残念がるもので、婚約者の、娘の死を悲しむものではなかった。